鈴木雄介(Yusuke Suzuki) - ドキュメンタリーフォトグラファー

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この世界で名前の知れた人になる

 
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鈴木雄介(Yusuke Suzuki) - ドキュメンタリーフォトグラファー

ミュージシャンから一転してカメラマンの道を志したゆうすけさん。29歳という若さで本場ニューヨークのプロカメラマンとして生計をたてている。それだけでもすごいが、ゆーすけさんの面白いところは、なんとシリアやアフガニスタンといった命の危険すらある戦地へにもシャッターを切りにいってしまうところだ。戦場カメラマンはお金がいいわけじゃない、それどころか命の危険すらある。にも関わらずどうしてそこまでこだわるのか、その理由を聞いてみた。


対談者:Dragon

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挑戦者(戸上恭丞http://tamariba.jp/lives/1769.html)の紹介。会った日に話し込み、途中から挑戦者(原ゆかり、米山こうじ、足立こうた等)と合流してわちゃわちゃする。次の日の我が家での年越しパーティにも参加。今後の溜まり場の動画部門も協力するよって言ってくれた!やさしい!おもろいことやっていきましょう!

 

26歳ボストンの写真学校(1年半)に入学。食う、寝る以外は写真を撮りまくって編集の生活

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― どうしてカメラを始めたんですか?
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フィリピンでの体験がきっかけかなぁ。

 

 元々ミュージシャンで
小学校からギターを弾いていて、 

音楽学校に入って本気でやってたんだけど、

 21歳の時にたまたま友達経由で、

フィリピンでストリートチルドレンを

支援してるNGOのとこに行くっていう企画を聞いて、

それに参加したんだよね。

 

そこですごい衝撃を受けた。

 

日本ってすごい平和で豊かだけど 

なかなかそれを実感できないじゃん。 

フィリピン行ったら、 

本当に貧しい子供たちがいっぱいいて、

 路上で行き交う車の窓を拭いたり

物乞いして生活したり、 

一日1ドルにもならない仕事なんだけど、

何十メートルもある高さの、汚染された

ゴミ山でクズ鉄拾って生計建てたり、

親も面倒見てくれる親戚もいない子たちは

お墓に集まって集団で生活してるんだ。

 

フィリピンのお墓って、 

駅のコインロッカーみたいな感じで

石の棺を何段も積み重ねたりするんだけど、 

お墓とお墓の間にスペースがあって、

そこで子供たちが寝てたりして。

 

まじっすか

 

中には家族で住んでる人もいて、

柵で囲まれた動物園の檻みたいな、人様の墓に勝手に

鍋とか生活用品持ち込んで暮らしてるの。 

冬のものすごい寒い日には、

棺の中の遺体が着てる服を剥ぎ取って、

寒さをしのぐ為に棺の中に入って寝るんだって。 

 

警官による暴力があったり、

空腹を忘れる為に小学生くらいの

小さな子達から大人までシンナー吸ってて、

信じられない光景だった。 

 

 そんなフィリピンの生活環境なんだけど

ある時ゴミ山の麓で、

トタンで作った簡素な家に暮らしてる女の子に、

いま考えるとすげぇ恥ずかしいんだけど、

「生まれ変われるとしたら、何になりたい?」

 って先進国から来た何も知らない

典型的なアホな奴の質問をしちゃったんだよね。

 

 

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― やっちゃいそうな質問ですねw
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そうw 

やっぱりお金持ちになりたいとか

医者とか教師になりたいみたいな、 

テレビで見た事あるような答えが

帰ってくるのかなって

アホな俺は思ってたんだけど、

その子は 「生まれ変わっても私に生まれたい。だって大好きな友達や家族がいるし、私は幸せだからって」言ったんだよ。

 

 

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― へぇ!考えさせられますね。。
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こんな劣悪な環境で

暮らしてるのにその言葉が出た事に 

俺はまた勝手にショックを受けて、

幸せってなんだろな、ってすごく考えるようになった。

 

たしかに日本は戦争もなくて、

普通に日常生活してて死ぬ危険なんて無いし、

ガスも電気も水道も24時間いつでも

使えるのが当たり前で、 

欲しい物が欲しい時に手に入る豊かな環境だけど、 

街を歩く人の顔はみんな険しくて、

暗くて、自殺率高いし、 

純粋になんでなんだろう?って思うようになった。

 

こんなにも何不自由無い世界に生きている人たちが、 

毎日をシンドそうに生きていて、 

これ以上悪い環境は無いんじゃないか?って

思えるような場所で、 

俺たちが当たり前だと思っている物事が

何一つ当たり前じゃない環境で

生きている人たちがすっごい笑って陽気に

家族や友人達と幸せに暮らしてる。

 

このギャップは何なんだろう?

幸せって何なんだろうって。

金と物があれば幸せっていうのかなと思ってたけど、

所詮それはただの「モノ」でしかないんだって気づいた。

 

 

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― たしかに幸福度指数でみても 日本は世界と比べるとよくないっていいますもんね。  
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ね。百聞は一見に如かずって本当によく言ったもので、 

フィリピンの体験からいろいろ考えさせられたよ。 

それで半年後くらいにアフガニスタンにも行った。 

そこでたまたま一緒にまわった人がカメラマンの人で、 

そこからカメラに興味をもったんだよね。 

 

フィリピンに行ったときは

コンパクトカメラだったし 

初めてのアフガニスタンは、 

ギター持っていってたくらいだからねw 

 

アフガニスタンはその後もう二回行ったんだけど、 

そのときは初めて買った一眼レフカメラを持っていったよ。 

 

 

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― どうしてアフガニスタンだったんですか?
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アフガン戦争って911の後から始まったんだけど、 

おれが初めてアフガニスタン行った2006年って 

もうみんな戦争のことを忘れてたよね。 

日本のメディアでは最初は大きく取り上げるけど、

いくらか経つとそういった情報が

全然流れないからね。 

 

だから実際どうなってるんだろうって思って 

それで見に行きたくなったんだよね。

あとは昔から興味があったのかもね。 

男だから小さい頃は戦車とかのプラモよく作ってたし、

エアガンもって公園とか森の中を走り回ってたし。 

所ジョージの事が好きで彼がいつもアメカジ着てて 

ミリタリー系のものとかすごい持ってて 

そういう影響もあったかもしれないね。

27歳学校を卒業し、フリーランスのフォトグラファーとして活動し始める

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― そこからなんでアメリカに住もうと思ったんですか?
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やっぱりジャーナリズム/ドキュメンタリーを

学ぶんならアメリカだろう!という思い込みかな。 

それでいろんな学校調べてたら、 

高橋邦典さんっていう俺が尊敬する

フォトグラファーが行ってた学校が 

ボストンにあるっていうのを知って。 

 

それでお金も貯め始めた。 

 

 

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― アメリカの学校って高いですよね? お金はどう工面したんですか? 
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日本で仕事して貯めたよ。バイトだけどね。

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― どれくらい貯めてきたんです?
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600万くらい。 学校が1年半で500万するからね。 

3年でなんとかためた。 

 

 

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― 高いっすねー! 
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高いところはもっと高いよ。 

はじめはカリフォルニアの学校にしようと 

思ったんだけど、高すぎてこれは現実的に行けないなぁと。 

だからカリフォルニアは 

語学学校だけ半年間通って 

その後ボストンの学校に入学したよ。 

 

 

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― それでも貯金なんてすぐなくなりますよね? 
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すぐ無くなったよ。 

めっちゃ倹約生活で服とか

ほとんど買った記憶ないもん。

 貯金を食いつぶす一方だから、

いつお金が底をつくかヒヤヒヤで精神的に良くなかったね。

 

お昼は1ドルのドーナツ2個!!とかw 

そんな生活してて2年ぶりに日本に戻ったときは 

「めっちゃ痩せたけど大丈夫!?』って

会う人皆に言われたねw

 

 

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― みんな初めはそうっすよね。ニューヨークで好きなことだけやって 生きてくのってまじきついっすもんね!
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だよね。

でもプロとしてフォトグラファーになる為に

アメリカに来たわけだから 

レストランとかバーでバイトは

絶対しないって決めてた。

 

バイトするにしてもカメラで金を作るぞ!って。

だから頑張ったよ。

 

 

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― もちろんはじめは英語も話せなかったんですよね?
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英語も全然喋れなくて、留学生もいなくて、

周りは俺以外みーんなアメリカ人だったよ。
だから写真では絶対負けねぇ!って
謎の気合いがあったw
これで写真も負けてたら、俺はなにも無いじゃないかってね。

 

だから学校にいる間、
誰よりも多くシャッターを切った自信だけはあるよ。
毎日、写真編集するラボが閉まる夜11時まで、
最後の一人になるまで残ってたし、
週末も関係なかった。

 

でもおかげで、

在学中から歴史ある

ボストン報道写真家協会のコンペで

一位を貰ったりとか、 

けっこういろんな賞を取れたから

それが自信に繋がったね。 

 

ひょっとしたらこの世界で

やっていけるんじゃないかと。 

 

 

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― ニューヨークってカメラマンいっぱいいるし、 しかも本場だし写真だけで食べていくって まじで厳しいみたいですね
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最近はさらに厳しくなってきてる。 

特にジャーナリズム/ドキュメンタリーの分野は。 

アメリカはもう紙媒体が駄目になってきてて、 

よっぽど大きい新聞社か通信社じゃない限りお金ないからね。

 

昔みたいに自社のカメラマンを

海外に送り込むってのは

もうなかなか無いんじゃないかな。 

インターネットがこれだけ普及したら当然なんだけど。

 

 

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― 一般カメラの性能も上がってきてますしね。 失礼な言い方になっちゃいますけど、 自分で上手く撮れたときとかおれの写真とプロの写真と 何が違うんだろうって思っちゃうときありますもんw
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そう、誰もがカメラを持ってるから、

昔みたいにプロしか写真を

撮れないっていう状況とは違うし、

誰でも綺麗に撮れちゃう。

 

もちろん、どれだけ説得力のある

パワフルなモノが撮れるのかっていったら 

経験とスキルのあるプロには全く敵わないんだけど。

 

 

そんな状況だからなかなか

高く買ってもらうのは難しい。 

他のジャンルの職業も同じように

色々過渡期だと思うけど、 

カメラマンも新しい媒体や表現方法を模索したり、 

他ジャンルのアーティストと協力したり、 

自分で付加価値をつける努力をしていかないといけない。

 

会社組織の時代は終わって、 

これからは実力と行動力のある個人同士が横で繋がって 

パワフルでオリジナルな物を出していく時代だと思う。 

それが可能な時代だし、皮肉だけど、

ネットの繁栄が古いものを壊していって

新しい物をどんどん作り出してるよね。

28歳ニューヨークに拠点を移す

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― 戦場写真以外の仕事もやってるんですか?
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動画の需要も増えてるから動画も撮ってるよ。 

元々ミュージシャンだったから 

CDのジャケットとかミュージシャンを撮るのも好きで、 

よくミュージシャンの撮影は写真、

ビデオ問わずするよ。 

 

戦場カメラマンは稼ぐために 

やる仕事じゃないよね。 

シリアなんて機材準備したり、 

ガイド雇ったり航空費だったりと 

取材するのに6000ドルくらいかかったからね、 

 

大赤字だよw

 

 

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― よくやりますよね苦笑
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大ケガするか死ぬかも知れないのにね。 

だから、稼ぐ事を目的にするんだったら、 

こういう写真は撮ってないと思う。 

 

たとえばニューヨークだったら 

ウェンディングとか相場7000ドルらしいからね! 

広告とかファッションとか

もっと稼げるジャンルを選んでると思う。 

 

 

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― それでも戦場の写真を撮りたいんですね。 
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紛争だけを専門的に撮りたい訳じゃないけど、 

自分が写真を始めた切っ掛けがやっぱり 

第三世界の酷い状況とか

アフガンの暮らしを見た事だったから、

やっぱり伝えないといけない事、

もっと人々が知らなきゃいけない事って あると思う。 

 

 

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― 戦争以外にも撮りたいものってあります?
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今年からは日本の元ハンセン病患者さん達についての 

プロジェクトも始めようと思ってるよ。 

当時、ハンセン病の人たちに対して、

まあ世界的になんだけど、 日本政府と国民が、

未知の病気に対する無知と恐れから

想像できないほど酷い事をしてきたんだ。

 

感染力はめちゃくちゃ弱いんだけど、

当時は子供にも遺伝するって考えられていて、

感染者は故郷から遠く離れた離島とか

山奥の施設に強制的に隔離されて、

死ぬまでそこを出られない。 

死んでもお墓はその島の中。

 

子供を持つ事も禁止されたから

強制的に堕胎とか断種されて、

家庭を持つ事も許されず、

自分の血はそこで途絶えるようにされたんだ。

俺が訪れた隔離されたある島では、

最盛期は3200人ものハンセン病患者が暮らしてて、

そこに住む人は平均で50年も

その小さな島に閉じ込められてた。

 

 

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― たしかにハンセン病って聞いたことありますが、 大抵の日本人は深くは知らないですよね。
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長い人で70年。

その島にはまだ80人くらいの方が暮らしてる。 

もう一生だよね。

 

完全に一般の世界とは切り離された状態だよ。 

今だったら簡単に治せるようになったけれども、

今も社会復帰できずにひっそりと離れ小島とか、

今は療養所って呼ばれてるけど元隔離施設で

余生を送っている人たちがいるという現実を

記録して残さないとなぁと思ってる。

 

元患者さん達はもうみんな80歳を超えてて、

5年10年したら皆亡くなって、

誰もが何があったかを忘れちゃう。

そうしたらまたいつかきっと同じ事が起こる。 

 

ハンセン病と違って強制隔離とか強制堕胎とかは無いけど、

現代で言えばエイズ患者の人たちも

社会的に差別されてるでしょ。 

あとは人種、出生地、難病患者、身体障害者、
ゲイやレズビアンとかトランスジェンダーといった
性的マイノリティに対する差別もたくさんある。

いまは、戦地の話でも社会問題でも、

いかに日本にいる日本の人たちにも 

自分が撮った人々、ストーリーを

身近に感じてもらえるかってのが課題かな。 

 

お互いを繋ぎ合わせる事が出来る

共通点みたいなところを見つけないと伝わらない。

28歳シリアに取材に行き、30歳までに紛争地域の第一線に行くという目標をちょっと早めに達成。

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― 戦場ってどうやって入るんですか?
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フィクサーっていって現地のガイドを雇う。

1日数百ドルとかで。 

シリアの時はそのフィクサーが 

反政府軍のメンバーだったから、 

一緒に反政府軍にくっついてずっとまわってたよ。

 

 

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― 絶対危ないですよね! 
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最近はとても危ない。 

ジャーナリストってだけで狙われるからね。

弾に当たる事よりも、誘拐が怖い。

 

前線に行って運悪く弾に当たるか、
無差別な空爆とか砲撃に当たらなければ 

死なないけど、誘拐はいつどこで起こるかわからない。 

昔は暗黙の了解って感じで

ジャーナリストは攻撃とか

拉致の対象にはなりにくかったんだけどね。 

 

 

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― なんで狙われるようになったんですかね? 
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単純にマフィアとかギャングみたいな連中が

お金目的で誘拐する事もあれば、 

プロパガンダ、情報戦の為にやる事もある。

 

政権が世界の人々に実際にそこで

何が起こっているのかを見せないために

特にジャーナリストを狙う事もある。 

シリアなんかまさにそう。
逆に言えば、それだけ写真やビデオ、

記事には人々を動かす力があるって事なんだけどね。

戦争を遂行してる連中はそれを知ってる。

 

ベトナム戦争は、

アメリカ政府が自国民に対して言う事と、 

フォトグラファー達が命がけで戦地から送ってきた、 

傷ついた米軍の若者達や虐殺されたベトナムの人々の、

悲惨な生々しい写真が映し出す現実が違いすぎて 

反戦運動が爆発的に全国に広がって、

結局アメリカはベトナムから撤退した。

 

 

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― シリアもアメリカが出す情報は偏ってますからね  
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シリアではこの3年で何十人ものジャーナリストが死んで 

今も30人以上が拉致されて行方不明になってるんだ。 

昨年も日本人ジャーナリストの山本美香さんが 

撃たれて亡くなった。 

 

道を渡る時とか、 政府軍の狙撃手が何百メートルも

先からライフルで狙ってるから、 

全力で走らなきゃいけない。

そういうときは怖いよね。

 

自分は運良く渡りきったけど、

後ろ走ってる人が撃たれたりするから。 

 

 

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― よくそんなとこ行きますね! やっぱそういう道を通過するときとか 毎秒びくびくする感じっすか? 
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もちろん。ただ祈りながら無我夢中で

走るしかできないけど。 

目の前でライフル撃ちまくったり、

隣のブロックに迫撃砲が落ちてきたり、 

そういう危ない所では体が

強制的にアドレナリンを出そうとするから 

普通の感覚はちょっと失われるかもしれない。

 

恐怖と緊張と興奮が入り交じった独特の感覚。 

体が恐怖と緊張をどうにかコントロールする為に

アドレナリンを出すんだろうね。

 

そうじゃなきゃ動けなくなっちゃう。 

そのおかげで集中力とか感覚が鋭くなって、

試合中のスポーツ選手と同じだと思う。 

でも、もともとそういう状況は予想できて、

そこで写真を撮る為に、行ってるわけだしね。

 

ドンパチやってるのは

あくまで戦争の一部分でしかないけど、 

やっぱストーリーの一部であるわけで、

そういう場面も撮らないといけないし、 

そこでパニックを起こすような人間は

そもそもこの職業に向いてないしやるべきじゃない。

 

マラソン選手が苦しいのは当たり前で

問題はそれをどう克服するか、っていうのと同じで、

怖いのは当たり前で問題は

それをどう克服するかって話。

 

 

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― ゆーすけさんは向いてそうっすね!
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そういう面では楽観主義かもしれないね。 

どっかで漠然と死なないだろうって思ってる。 

紛争地域とか危ない環境で活動してるフォトグラファーは

きっと皆そう思ってるよ。 

 

そうじゃなきゃとてもやってられない。

 

ネガティブに考える人とか

センシティブな人は向いてないと思う。 

それでもやっぱりPTSD(心的外傷後ストレス)に

苦しむ人も多いって聞くよ。

俺もシリアで毎日砲撃の音を聞いてたら、

花火の音がそれにしか聞こえなくなっちゃったし。

28歳仕事へのこだわり

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― 命をかけて写真をとられてるだけあって、やっぱり仕事への特別なこだわりってありますか?
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俺は自分の事はドキュメンタリーフォトグラファーだと思ってるんだ。

 

ジャーナリスムってのは
「出来るだけ早く、起こった事を情報として正確にそのまま伝える』のが仕事だから、
なるべく中立じゃないといけないんだけど、

 

ドキュメンタリーってのは
ジャーナリズムよりも、
もっと自分の考えや個人的な視点を
盛り込んでストーリーに踏み込んでいって
物事を伝えるんだ。

 

それをするには
人と親しくなって信頼関係を
築かなきゃいけない。

 

俺が見て、俺が感じた事や
俺が伝えたい事を表現するの。
だからジャーナリズムよりも
パーソナルな視点で、
俺という人間を通してストーリーを出す。

 

俺が一番伝えたいのは「情報」じゃなくて
写真の中に写っている人たちの「感情」なんだ。

 

情報じゃ人の心を動かす事は出来ないけど、
人間の剥き出しの感情を目の当たりにしたら、
人はそれに対峙せざるを得ないし、
自然に何かしら心の中に
それに対する反応が生まれる。

 

それが狙いであって、
そこから何かのきっかけが生まれたらと思ってる。

 

それに人間だし、
俺の分身がいて色んな立場から
まったく同時に同じストーリーを
撮れれば中立に撮れるけど、
それは物理的に無理な話で。。。

 

だから写真を見る側にも
求められる事があって、
それはけっしていくらかの
限られた写真や記事だけを見て、
それで全てがわかると思わない事。

 

美術館で大きな作品の前に立つ時や、
小説を読む時のように、
いま自分が目にしている物の奥にある物事を
頭の中で想像して欲しい。

 

一体この写真の背景には何があるんだろう?
どうしてこうなったんだろう?
この人たちはどんな気持ちなんだろう?って。

 

同じ出来事でも色んな写真家のストーリーを見て、
記事をみて、それで自分なりに何が真実なのかって事を
見極めなきゃいけない。
自分自身の顔や体だって、
違う角度から見たら別人に見えるでしょ?

 

色んな角度から見てみなきゃ、
それがいったい本当はどんな形を
してるかは決してわからない。
それと同じ事。

 

立場が違えば見え方はいくらでも変わるって事を
覚えておかなくちゃいけない。

写真家に限らず、
なにかを表現する人の作品ってのは
作ってる段階ではそれは制作者の物だけど、
一端それが外に向けてアウトプットされたら、
あとはもうその瞬間から見る側に委ねられる。

 

全てを表現者にまかせちゃいけないし、
受け取る側が見たり聞いたり触ったりして、
自分なりに吸収する事で初めて、
その作品と繋がりが生まれるんだ。

 

だから、俺はドキュメンタリーフォトグラファーだから、
決して完全中立の立場から撮ってないと思う。

野望この世界で名前の知れた人になる!

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― 野望を教えてください。
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もうジャーナリズム/ドキュメンタリーの写真は

世に溢れすぎて、人の関心を惹くのが難しくなってきてる。

だから他ジャンルのアーティストとコラボしたりして

新しい見せ方をしなきゃいけないと思う。

 

一人の力なんてたかが知れてるからね。

 

俺は写真の天才でもないし、ビジネスの才能もない。

だけどそれぞれ特技を持った人が集まって、

新しいテクノロジーを組み合わせて使えばきっと

心に響く物が作れると思う。

 

何年も何十年も掛かるかもしれないけど、

自分のスタイルで色んな人に

世界で起こってる事を伝えて、

それにも目を向けてもらいたいね。

 

個人的な野望はやっぱこの世界で

名前の知れた人になる事。

そうすればお金も入って、

もっと自分のやりたいプロジェクトが

自由にできるようになるし、

名前が売れてれば見る人も増えるから、

結果的により多くの人にストーリーを

知ってもらえて何かを動かす切っ掛けになる

可能性が高まるよね。 

 

↓photo/Glen Cooper

生き方自分のやりたい事、すべき事をする。

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― どういう生き方していきたいですか?
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自分への戒めでもあるんだけど、 

自分のやりたい事、すべき事をする。 

自分の為だけじゃ無く、人の為になる事をする。

 

いつも自分の事ばかり考えていたら、

欲望、嫉妬、後悔でロクな人生を送れないと思うよw 

でも人の為に何かをする時は

エゴにまみれた私心は二の次になって、

あの状況を変えるにはどうしたらいいだろうか?

どうしたら相手が喜んでくれるか?って

相手の気持ちになるからよっぽど楽だと思う。

 

人の為に生きた方が良い人生を送れると思うよ。 

煩悩を捨てるって仏教の教えみたいだねw 

メッセージ好きな事やって生きる生活はストレスも周りの目を気にしすぎる事も 少なくて楽しいよ。

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― 一歩をなかなか踏み出せないでいる日本の若者へ一言お願いします。
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東日本大震災で日本の人も実感したと思うけど、

いつ何時、なにが理由で人生が突然終わるか

誰にもわからない。

 

平和に生きたとしても80年なんて

短い間に人の一生は終わる。

何をどんな形で達成しようが、

絶対に人間は後悔をする。

だったら自分の思う自分がすべき事、

やりたい事を見つけられるように色んな体験をして、

これだ!と思う物が見つかったら覚悟を決めてやる!

 

一番難しいのはその最初の一歩を踏み出す所で、

勇気を出して一歩進めば意外とあとはどうにかなる。 

何も考えないで行動するのはダメだけど、

考えすぎて結局何もしなかったら

それは考えてもいないのと同じ事。 

 

ちょっと考えたらあとは動いてみる。

そしたら周りも必ず動き出す。 

自分がいて心地よい環境を抜け出す事。

リスクをとる事。

 

これだけ簡単に外国に行ける時代なんだから、

アメリカとかヨーロッパみたいな先進国じゃなくて、

もっと地球の反対側も覗いてみて、

客観的に自分の事、自分が置かれた環境の事、

日本の事を見れるようにすること。

 

そうすれば、こういう生き方もアリなんだ!!

って事に気づいて自分の人生の選択肢も広がると思うよ。

 俺が実際に、フィリピンやアフガンでの体験を通して

人生を変えられたから保証するよ!!w 

 

基本的に生きるってことは辛いし大変だけど、

野生の動物みたいに

毎日食われる心配しなくていいだけラッキーだし、

好きな事やって生きる生活はストレスも

周りの目を気にしすぎる事も

少なくて楽しいよ。

 

BIOGRAPHY

  • 00歳千葉県生まれ
  • 04歳自我に目覚める。(最初の記憶は、保育園の教室でイジワルな年長組の男の子にオモチャをむしり取られるというシーン)
  • 06歳小学校に入学、人生初のモテ期を華麗にスルー
  • 11歳ギターを始める。XのHIDEをヒーローとして勝手に崇拝
  • 12歳人生で最初で最後の学級委員長に就任
  • 13歳中学校にて軟式テニス部入部、部活とギター漬けの生活を送る
  • 14歳第二モテ期到来するも残念ながらこれもスルー。洋楽にハマる
  • 15歳学らんでギターを弾くのが嫌で、必死に勉強して私服高校に入学。寝ても覚めてもギターを弾く生活。
  • 18歳音楽学校に入学。ロックからジャズまでギターを弾きまくる。(最盛期には家に8本くらいのギターが!)
  • 21歳夏休みに友人達と一ヶ月をフィリピンで過ごし、初めて世界の一端を見てショックを受ける。
  • 21歳初のアフガニスタン行き、国連の飛行機に潜り込みカメラの代わりにギターを持参。チャリを漕いでいたらテロリストと思われ米軍に捕まる
  • 22歳カメラに目覚めアフガンに2度戻る。地雷原を歩いたり、地元警察に拘束されたりしながら写真を真剣に学ぶ事を考え始める
  • 23歳タイ、カンボジアに写真を撮りに行き、カンボジアのナイトクラブで危うくオカマにホテルに連れ込まれそうになる
  • 23-25歳12時間労働を週6で600万貯金
  • 26歳初のアメリカ、カリフォルニアの語学学校に通う。大好きなマイケルジャクソンの家を見て感動
  • 26歳ボストンの写真学校(1年半)に入学。食う、寝る以外は写真を撮りまくって編集の生活。
  • 27歳学校を卒業し、フリーランスのフォトグラファーとして活動し始める
  • 28歳ニューヨークに拠点を移す。
  • 28歳シリアに取材に行き、30歳までに紛争地域の第一線に行くという目標をちょっと早めに達成

鈴木雄介(Yusuke Suzuki) - ドキュメンタリーフォトグラファー

海外飛び出し年齢:26歳(, ,

ニューヨーク(在住経験地:, , ,

ウェブサイト ・鈴木雄介ウェブサイト Facebook
 
 

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